第58回大会記念講演 講師:角谷敏夫先生

プロフィル

      大学卒業の昭和48年から松本少年刑務所教育課に法務教官として勤務し、35年間、松本

市立旭町中学校桐分校の教壇に立ち、そのうち33年間、桐分校クラス担任を務める。

○ 主な執筆等

「信濃教育」昭和56年2月号(bP131号)に執筆

「犯罪と非行」平成1年8月号(bW1)に執筆

「法務教官の仕事がわかる本」共著(法学書院 平成12年刊)

「兵庫教育」平成13年7月号(bU05)に執筆

「天声人語」平成19年2月5日に紹介される。

ニッポン放送「菅原文太 −日本人の底力」に出演(平成1911月)

日本テレビ木曜ゴールデンドラマ「鉄窓の中の女教師」(桐分校を舞台にしたもの)の原案

を執筆(平成1年・2年と2作が放映)

「刑務所の中の中学校」(しなのき書房・平成22年8月刊、NHK週刊ブックレビューで取り
上げられる。第24回地方出版文化功労奨励賞を受賞)

TBSテレビドラマ特別企画「塀の中の中学校」に企画協力として携わる。平成22年10月放映
(第51回モンテカルロテレビ祭において最優秀作品賞・モナコ赤十字賞等を受賞)

TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」に出演(平成22年11月)

月刊誌「致知」で誌上対談(平成23年6月号)

NHKラジオ深夜便「明日へのことば」に出演(平成24年6月)

 

○ これまでのおもな講演

相田みつを美術館  沖縄県中小企業経友会事業協同組合講演会

駿河台大学現代文化学部教養文化講演会  北九州市人権週間記念講演会

第24回地方出版文化功労奨励賞受賞記念講演会  第49回埼玉県保育研究大会

長野県教育委員会(小中学校長研修会 社会人権教育リーダー研修会等 )

文部科学省指定校人権教育研修会(塩尻市立吉田小学校) 

信濃教育会青年教師フォーラム研修会  第13回図書館総合展フォーラム  

飯能市教育研究会  静岡県高等学校生活指導研究会 長野県PTA連合会  

そのほか全国各地の中学生、高校生、大学生、小中高校教職員・PTA、青少年健全育成会等


○ 記念講演に向けて
 松本市立旭町中学校「桐分校」は刑務所の中にある日本で唯一の中学校です。世界にも類例は
ありません。いろいろな事情から義務教育を修了できなかった受刑者が学んでいる中学校です。

 桐分校は昭和30年に設立されましたが、それは松本市民、長野県民の深い人間愛と教育への
深い理解、教育の力への信頼から誕生した ものです。

 57年の桐分校の歴史の中で、私は昭和48年から35年間桐分校に携わり、そのうち33年間、
桐分校クラス担任を務めてきました。

今回は桐分校がどのような学校であるのか。桐分校で私が体験したこと。出会った生徒たちのことと
その学ぶ姿、そして卒業後の彼らの 生きる姿。私の歩んできた道等をお話したいと思います。そして、
その中で学ぶ意味、学ぶ喜び、学ぶ楽しさ、さらに学びと感動が人を変 え人を成長させることを考えて
みたいと思います。

 ところで私は35年間、どのような気持ちで、どのような姿勢で生徒と向き合ってきたのでしょうか。
それは彼らがこれから生きていく 心の糧になるもの、人生の支えになるものを在学中の1年間に1つで
いいから見つけて欲しい、作って欲しい。生きる力を養って欲しい。 1日に1つでよいから感動を味わっ
て欲しい。そう願いながら入学式から卒業式までの日々を送りました。

拙著「刑務所の中の中学校」を執筆するという作業は、同時に私自身の35年間を振り返るという作業
でもありましたが、私は彼らに 学ぶこと、生きることの意味を問い続けていたのだと思いました。そして
それは同時に、私自身への問いかけでもあったのだと思いまし
た。学ぶことで人は変われる。学ぶ人間の可能性を信じることができます。

  

 第58回大会記念講演 「 刑務所の中の中学校 桐分校 〜その学びと感動 〜 」

1 はじめに 

2 日本で唯一の刑務所の中の松本市立旭町中学校桐分校

(1) 桐分校とは

(2) 設立の経緯と背景

3 学びと感動の桐分校の1年

(1) オリエンテーション

(2) 入学認定会議

梅雨が明けるまで

(3) 入学式 

(4) 日本一勉強する中学生                   

(5) 桐分校入学の動機                             いのちの根

(6) 一つ学べば一つ世界が広くなる                       なみだをこらえてかなしみにたえるとき

学然後知不足(学びてしかる後 足らざるを知る 礼記)  ぐちをいわずにくるしみにたえるとき

(7) 指に漢字を書いて                        いいわけをしないでだまって批判にたえるとき

(8) 遠足、持っていくものは 「信頼」 だけ            いかりをおさえてじっと屈辱にたえるとき

4 卒業・出所後の生徒たちの今                                あなたの目のいろがふかくなり

5 卒業式前日のいのちの根の感想                                  いのちの根がふかくなる

6 卒業式                                       (相田みつを 「にんげんだもの」より)

7 私がこの仕事を選んだ理由 

8 桐分校登山                    

  りんどうよ寒さに堪えて来る夏に咲かせてくれよ紫の花

9 刑期于無刑 (刑は刑無きを期す   書経)